認知症の在宅介護で起こりやすい3つのリスク

認知症の方の在宅介護では、身体機能の問題だけでなく「認知機能の低下による行動」に対応することが求められます。用具選びの観点から整理すると、主に3つのリスクに対応する必要があります。

リスク具体的な場面主な対応用具
徘徊・不意の外出夜中に玄関から出て行方不明になる徘徊感知機器(ドアセンサー・マット)
夜間の転落・転倒夜中に一人でベッドを降りようとして転落低床ベッド・ベッドセンサー・床マット
誤操作・事故コンロの火を消し忘れる・薬を大量に飲むガスロック・薬ケース(介護保険外)

徘徊感知機器の種類と選び方

徘徊感知機器は介護保険の「福祉用具貸与(レンタル)」の対象品目で、要介護1以上が対象です。センサーの種類によって感知のタイミングと精度が異なります。

センサータイプ感知のタイミング誤報の多さ向いている場所
床マット型ベッドから足がマットに触れた瞬間少ないベッドサイド(起き上がり感知)
ベッドセンサー(在床検知)ベッドから体重が離れた瞬間少ないベッド本体(離床直後の感知)
赤外線・超音波型一定範囲内への移動やや多い(ペット・カーテンで誤報の可能性)居室内・廊下
ドアスイッチ型玄関・扉の開閉少ない玄関・室内ドア(外出感知)
受信機(通報先)の選び方

徘徊感知機器は「送信機(センサー)」と「受信機」がセットになっています。受信機のタイプは①専用受信機(家の中に置く・ベル音)、②携帯電話への通知(スマートフォン連携機種)、③訪問介護や施設スタッフへの業務用通報の3種類があります。在宅で家族が受け取る場合は②のスマートフォン連携タイプが便利です。

夜間の転落・転倒防止用具

認知症の方は夜間の覚醒時に「今自分がどこにいるか」の見当識が低下し、突然ベッドから降りようとする行動が見られます。転落リスクを下げるには「低床ベッド + 離床センサー + 床マット」の組み合わせが有効です。

用具効果介護保険費用目安(1割負担)
低床介護ベッド(最低床高11〜15cm)転落した場合の衝撃を最小化レンタル対象(要介護2以上)月額1,000〜2,000円
ベッドセンサー(在床感知マット)離床直後に介護者へ通知徘徊感知機器としてレンタル対象月額300〜1,000円
床マット(転落衝撃吸収)転落した場合のけがを軽減対象外(購入)5,000〜20,000円
サイドレール(2本まで)寝返り時の転落防止介護ベッド付属品として対象ベッドレンタルに含む
サイドレール4本設置は身体拘束にあたる場合がある

介護ベッドのサイドレール(柵)を4本すべて設置することは「ベッドからの脱出を物理的に防ぐ」行為とみなされ、身体拘束に該当する場合があります。サイドレールは原則2本設置(頭側)とし、利用者の移動を支援するために使用します。転落防止は低床ベッド・センサー・床マットの組み合わせで対応してください。

認知症の進行度別・用具の選び方

認知症の進行度(CDR:臨床認知症評価尺度)によって、有効な用具の種類が変わります。

CDRステージ日常生活の状態主な用具ニーズ
CDR 0.5〜1(軽度)複雑な日常活動に支障。物忘れが目立つ転倒予防の手すり・杖、ドアセンサー
CDR 2(中等度)日常生活に介助が必要。見当識障害あり徘徊感知機器・ベッドセンサー・低床ベッド
CDR 3(重度)日常生活全般に介助が必要。意思疎通困難介護ベッド・エアマットレス・移動用リフト

誤操作・事故防止(介護保険対象外の対策)

ガスコンロの消し忘れや薬の過剰服用など、認知機能の低下による「誤操作」リスクへの対策は、福祉用具(介護保険)の範囲外ですが、家庭内環境の改修として有効な方法があります。

リスク対策費用目安
ガスの消し忘れガスコンロ→IHクッキングヒーターへ切替30,000〜100,000円(一部自治体補助あり)
薬の飲み間違い・過剰服用曜日別・時間別の服薬管理ケース1,000〜5,000円
玄関からの不意の外出玄関ドアへのチャイルドロック・補助錠1,000〜10,000円
水道の出しっぱなし自動止水栓・タイマー付き蛇口5,000〜30,000円

まとめ

認知症介護の用具選びチェックリスト
  • ☑ 夜間の外出が心配 → ドアセンサー型または床マット型の徘徊感知機器を検討
  • ☑ ベッドからの転落が怖い → 最低床高11cmの低床ベッド+ベッドセンサー+床マット
  • ☑ サイドレールは2本まで(4本全設置は身体拘束になり得る)
  • ☑ ガスコンロの消し忘れ → IH調理器への切替を検討
  • ☑ 進行に伴って用具を見直す(半年〜1年ごとのアセスメント)

認知症の在宅介護では、「今の症状」に合わせた用具選びと同時に「3〜6ヶ月後の状態の変化」を見越した準備も重要です。担当のケアマネジャーと定期的に用具の見直しを行ってください。