褥瘡(床ずれ)とは|なぜ起きるのか
褥瘡(じょくそう)とは、皮膚が長時間圧迫されることで血行が途絶え、皮膚組織が壊死(えし)した状態です。「床ずれ」とも呼ばれます。
特に骨の出っ張り(仙骨・かかと・肩甲骨・後頭部)に発生しやすく、一度できると治療に長期間かかり、重症化すると感染症・敗血症のリスクも高まります。
- 自力での体位変換が困難な方(寝たきり・半寝たきり)
- 低栄養状態(アルブミン値が低い方)
- 尿・便失禁がある方(皮膚が常に湿潤している)
- 浮腫(むくみ)がある方
- 骨が突出している方(極端に痩せている方)
褥瘡予防用具の種類と特徴
① 体圧分散マットレス
体の圧力を広い面積に分散させ、骨突出部への集中的な圧迫を防ぐマットレスです。素材によって特性が異なります。
| 素材 | 特徴 | 褥瘡リスクの目安 | 月額目安(1割負担) |
|---|---|---|---|
| 高機能ウレタン | 体圧分散性が高い。通気性あり。扱いやすい | 低〜中リスク | 200〜500円 |
| ゲル・ウォーター | 体に密着して圧力を均等化。重量がある | 中リスク | 500〜1,500円 |
| 圧可変型エア | 空気圧を細かく調整できる。体圧分散性が高い | 中〜高リスク | 800〜2,000円 |
② 圧切替型エアマット
複数のエアセル(空気室)が交互に膨らみ・しぼみを繰り返すことで、皮膚への圧迫が特定部位に集中することを防ぎます。自力での体位変換が全くできない方や、すでに褥瘡がある方に適しています。
ポンプ(コンプレッサー)が必要で、連続使用時は電源確保が必要です。動作音が多少あります(静音設計のモデルもあり)。
圧切替型:複数のエアセルが交互に膨縮。体圧を時間的に分散。予防〜治療レベルに対応。
圧可変型:エア圧を調整して身体形状に合わせて体圧を面的に分散。主に予防目的。
③ 体位変換用クッション
側臥位(横向き)を安定させ、2時間ごとの体位変換を補助するクッションです。三角形・ウエッジ型が一般的で、背中に当てて30度側臥位(完全横向きより浅い角度)を保持します。
30度側臥位は仙骨への圧力が最も小さい体位として推奨されています。
介護保険でのレンタル条件と費用
床ずれ防止用具(体圧分散性マットレス・体位変換器)は介護保険の「福祉用具貸与(レンタル)」の対象品目です。
レンタルの対象要件
- 対象:要介護2〜5の認定を受けている方
- 原則対象外:要支援1〜2・要介護1(例外給付あり)
- ケアプランに「床ずれ防止用具」が位置づけられていること
要介護1でも「日常的に寝返りが困難な状態」が医師またはサービス担当者会議で確認された場合は、例外として床ずれ防止用具のレンタルが認められます。ケアマネジャーに相談してください。
| 用具の種類 | 月額全額 | 1割負担 | 3割負担 |
|---|---|---|---|
| 高機能ウレタンマットレス | 2,000〜5,000円 | 200〜500円 | 600〜1,500円 |
| 圧可変型エアマット | 8,000〜20,000円 | 800〜2,000円 | 2,400〜6,000円 |
| 圧切替型エアマット | 15,000〜50,000円 | 1,500〜5,000円 | 4,500〜15,000円 |
| 体位変換用クッション | 1,000〜5,000円 | 100〜500円 | 300〜1,500円 |
カタログ掲載の実商品例(2025年度版)
実際に福祉用具レンタルカタログに掲載されている床ずれ防止用エアマットの商品例です(2025年4月時点)。
| 商品名 | メーカー | 種別 | 厚さ | 体重対応 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| ここちあ利楽(KE-973S) | パラマウントベッド | 圧切替型 | 13cm | 20〜138kg | 体重・体形・背あげ角度を自動検知調整。グライドシートでズレ軽減。1日電気代約2.2円 |
| マイクロクライメイト ネクサスアイビー | ケープ | 圧切替型 | — | — | 通気性を高めるマイクロクライメイト制御搭載 |
| ビッグセルアイズ | モルテン | 圧切替型 | — | — | 停電時は電磁弁が自動作動し空気漏れを遮断、約14日間内圧保持 |
| ステージア | モルテン | 圧可変型 | — | — | 停電時はウレタンフォーム層が体圧分散を継続 |
エアマットは電源が必要なため、停電時の安全性は重要なポイントです。「ここちあ利楽」は停電時に空気排出を自動停止して約14日間内圧を保持します。「ビッグセルアイズ」は電磁弁が自動作動して空気漏れを遮断します。停電中は圧切替機能は停止するため、体位変換などの対応が必要です。
褥瘡予防の4原則|用具だけでは不十分
用具の活用と同時に、以下の4つの基本対策を組み合わせることが重要です。
- 体位変換(2時間ごと):同じ部位への長時間の圧迫を防ぐ。夜間は4時間ごとでも可(エアマット使用時)
- 体圧分散マットレスの使用:骨突出部への圧力を広く分散させる
- 皮膚の清潔・保湿:失禁後は速やかに清拭。乾燥肌には保湿クリームを使用
- 栄養状態の改善:タンパク質・ビタミンC・亜鉛の摂取が皮膚の回復力を支える
エアマットは柔らかいため、その上で立ち上がろうとすると足元が不安定になります。立ち上がりの際にはエアマットの端(固い部分)を使うか、一時的に圧力を高める機能があるモデルを選ぶと安全です。
まとめ
- ☑ 体位変換を2時間ごと(または4時間ごと)に実施しているか
- ☑ 褥瘡リスクに合った体圧分散マットレス・エアマットを選んでいるか
- ☑ 失禁後はすぐに清拭・保湿を行っているか
- ☑ 栄養状態(特にたんぱく質)を確保しているか
- ☑ 要介護2以上の認定を受けているか(レンタル対象の確認)
- ☑ ケアマネジャーにケアプランへの組み込みを依頼したか